化学物質の爆発安全情報データベース

3　圧力容器試験

3.1　試験の日的

　本試験は、固体又は液体の物品の加熱分解の激しさを判断することを目的とする。

3.2　装置及び器具

（1）圧力容器試験装置

圧力容器：ステンレス鋼製　内容量200cm^３
　　　シース熱電対を試験物質中に挿入できるように工夫されたものでもさしつかえない。

（2）破裂板

　ゲージ圧で示す破裂圧力（6.0±0.5）×10^５Paの金属製（アルミニウム等）同一製作ロットについて、オリフィスを取り付ける開口部等から圧縮された不活性ガスを送り込み、破裂板の破裂圧力を事前に確認しておく。
　ふっ素ゴム又はテフロン製等の耐熱性のパッキングをはさんで取りつける。
　破裂圧力の確認試験の手順の例を示す。

　ア　製作

　（ア）使用する材料は、ALその他金属製のものを使用する。

　（イ）ALの場合、「アルミニウム及びアルミニウム合金の板及び条」（JIS H4000-1988）に規定されているもの（例えば下記のもの）を使用する。

　ここでH24はJIS H0001（1979）に規定される質別記号であり、具体的には硬度を表わす。
　公差は、－0.00とする。

　（ウ）規定の寸法に仕上た後、360℃程度で約1時間焼鈍する。

イ　破裂試験

　（ア）破裂試験は、本来流体だけでなく、温度等も可能な限り、実際に近い条件で実施すべきであるが、ここでは大気温度の空気を使用する。

　（イ）同一板材から製作した破裂板について、下記数量を目安に抜き取り、試験に供する。

　（ウ）加圧開始から破裂迄の時間は実際に即した昇圧速度を考え10～30秒とする。昇圧速度が早すぎると衝撃による脆性破裂を起こし、また昇圧速度が遅すぎるとクリープの影響で破裂圧力が低下する。

　（エ）昇圧配管には、流量調節用の絞り弁等を取り付けておく。

　（オ）使用する圧力計の最大目盛は、10×10^５Paで、一定期間ごとに較正したものを用いる。

ウ　試験結果の評価

　　抜き取った試験品の破裂圧力が、いずれも（6.0±0.5）×10^５Paの範囲に入った場合を合格とする。

（3）オリフィス板

　　細孔径1.0mm及び9.0mm、厚さ2.0mmのステンレス鋼製のもの。
　　ふっ素ゴム製又はテフロン製等の耐熱性のガスケットをはさんで取り付ける。

（4）試料容器

　　内径約30mm、高さ約50mm、厚さ約0.4mmの平面底のもので、かつ、上部開放のアルミニウム製の円
　筒形のもの。

（5）加熱器
　　出力700W以上の電気炉。
　　温度調節計には、電圧計及び電流計を備えること。

（6）CAシース熱電対及び温度記録計

（7）化学はかり

3.3　試験物品の網整

　原則として流通している形状のものを試験に供する。
　（注）1回の試験に必要な標準使用量　　50～100g
　　　　　5g×（10～20）回＝（50～100）g
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

3.4　試験場所

（1）試験場所は屋外又は大気下の換気設備のある室内とする。

　　（注）圧力容器試験は、試験物品を分解させ、それによって破裂板を破壊させるというかなり危険を伴う試験法であり、その実験操作には、かなりの注意を必要とする。内部の試験物品が爆ごうした場合には、実験者に危害が及ぶので、電気炉にセットしたあとは、ビデオカメラによるモニター等の遠隔監視が必要である。室内で実施する場合は、簡易防爆壁等人的被害を防止できる設備を検討する必要がある。

3.5　試験方法

（1）試験前の準備

　ア　昇温速度の調節

• （ア）試料容器にシリコンオイル5gを正確にはかりとる。
• （イ）圧力容器の底部中央に試料容器を置く。この際、オリフィス板は、細孔径9.0mmのものを取り付けておく。
• （ウ）破裂板またはそれに代るもの（アルミホイル板等）を取りつけ、シース熱電対が挿入できるよう中央に2～5mmの穴をあける。
• （エ）シース熱電対を容器上部から挿入し、先端の測温部がシリコンオイルに十分浸漬するように固定する。
• （オ）熱電対の出力ケーブルを記録計に接続し、熱電対の較正をする。
• （カ）あらかじめ加熱しておいた電気炉に圧力容器をセットすると同時に、温度の記録を開始する。
• （キ）記録チャート上で、シリコンオイルが100℃から200℃まで上昇する時間を測定し、その間の昇温速度を計算する。
• （ク）昇温速度が40±5℃／分となるような電圧及び電流値を求め、調節位置をロックもしくはマーキングする。
• （ケ）この設定値で常温から400℃まで昇温するのに必要な時間を測定する。
• （コ）この設定値は、試験が終了するまで変えない。
  • （注）この調節は、同一試験場所でかつ同一試験装置について一度行えばよい。
  • （注）季節により外気温が変化するため、気温による電圧及び電流設定値の変化を事前に求めておくことが望ましい。

　イ　電気炉の加熱

　　　あらかじめ所定の電圧、電流を少なくとも30分以上かけて加熱しておく。
　　　（注）できれば1時間が好ましい。

（2）試験物品の測定

　　　試験の安全を考え、細孔径9.0mmオリフィス板試験から始める。

　　ア　細孔径9.0mmオリフィス板試験

• （ア）圧力容器の側面に細孔径9.0mmのオリフィス板を取り付ける。
• （イ）試験物品5gを正確にはかりとり、試料容器に入れる。このとき試験物品が容器の内壁に付着しないようにし、又、底部に均一となるように注意する。
• （ウ）試料容器を圧力容器の底部中央に置き、上部に破裂板を取り付ける。
  　　　この際、ガスの洩れのないよう、又、破裂板を傷めないように注意深く締めつける。
  • （注）シート面の傷や異物の付着は、異常破裂やピンホールの原因となるので、シート面を溶剤等できれいにしておく。破裂板は、柔らかく薄い板であるため、しわにしたり、指紋をつけないよう注意深く取り救う。
• （エ）熱によるクリープのため、破裂板の破裂圧力が低下するのを防止するため、破裂板
  　　　の上部に水を張る。
• （オ）圧力容器を電気炉に入れたら全員退避する。
• （カ）測定は、破裂板が破裂するか、又は、事前にシリコンオイルで測定した時間を過ぎるまで続ける。
  • （注）試験中でも試験物品の温度を測定できるように工夫された圧力容器を使用する場合は、400℃になるまで加熱する。
• （キ）終了したら、容器を下ろし、ある程度冷えてから水中へ入れて冷却する。
• （ク）冷却後内部の残留物を掃除し、洗浄する。
• （ケ）（ア）から（ク）までの操作を10回繰り返す。
• （コ）10回の測定のうち6回以上破裂板が破裂しない場合には、次の細孔径1.0mmのオリフィス板試験を実施する。
  • （注）5回破裂板が破裂した場合は、その時点で測定を終了してよい。また、6回破裂しなかった場合は、その時点で測定を終了し、次の1.0mmオリフィスの試験に移る。

イ　細孔径1.0mmのオリフィス板試験

　圧力容器の側面に細孔径1.0mmのオリフィス板を取り付ける。以下上記アの試験と同様な操作を行う。

• （注）5回破裂板が破裂した場合、又は、6回破裂しなかった場合は、その時点で測定を終了してよい。
• （注）試験の能率をあげるために次の方法を採用してもよい。
  　9.0mmオリフィスの試験において最初の1回目で破裂しなかった場合は、この時点で1.0mmオリフィスの試験に移る。そして、6回破裂しなかった場合は、測定を終了し、5回破裂した場合は、ふたたび9.0mmオリフィス試験に戻る。そして最初の1回を含めて6回破裂しなかった場合、又は5回破裂した場合は測定を終了する。

（3）測定上の注意事項

• ア　測定の能率をあげるためには、試験中電気炉の電源を入れ放しにする必要がある（電気炉の昇温に時間を要するため）。したがって、1回の測定終了後、破裂板が破裂していない場合は、圧力容器を電気炉から下ろすために近づくことは非常に危険である。このためエアーシリンダー等により遠隔操作で圧力容器を電気炉から抜き出せるよう工夫する必要がある。
• イ　圧力容器の内側は、試験物品の熱分解物やタール等が付着し、洗浄に時間を要する。
  　　酸・アルカリ・溶媒等を用いて完全に洗浄する。
• ウ　容器の洗浄に、アセトン、アルコール等の溶剤を使用する場合は、換気及び火気に注意する。特に電気炉の付近では作業をしない。
• エ　オリフィス部は、特に念入りに洗浄・点検する。
  細孔径1.0mmのオリフィスは、タールにより閉塞しやすいので、オリフィス孔の汚れの無いことを確認した後に圧力容器に取付ける。
• オ　多数の試料容器を用意しておけば、試験物品の準備を能率的に行うことができる。
• カ　冷却後、内部の残留物を掃除する場合は、発塵する可能性があるため、防塵マスク等を使用する。また、加熱によって物質の性状が変化している可能性があるため、特に破裂板が破裂しなかった場合でも注意深く作業する。
• キ　ビデオカメラ等でモニターできる場合は、加熱中のオリフィス穴からのガスの噴出の様子を観察しておく。
• ク　破裂板が周辺部から破裂した場合には、ガスケットの材質をフッ素ゴム系の軟質のものに変更し、再度試験を行う。

3.6　試験結果の評価

（1）細孔径9.0mmのオリフィス板を取り付けて行った10回の測定において、破裂板が破裂した回数が5回（確率50％）以上のものを「ランク①」と評価する。

（2）細孔径1.0mmのオリフィス板を取り付けて行った10回の測定において破裂板が破裂した回数によって次のように評価する。

ア　5回以上のものは「ランク②」
イ　4回以下のものは「ランク③」